今回は「106万円の壁」とは何か。よく比較される「130万円の壁」との違いを分かりやすく解説します
106万円の壁とは
106万円の壁にあてはまる条件
106万円の壁を超えた場合、自分の勤務先の社会保険への加入が義務づけられて、旦那の社会保険の扶養から外れる可能性があります。そのため、自分が106万円の壁に当てはまってないか把握しておかなければいけません。
- 週の所定労働時間が20時間以上
週5日8時間勤務の場合、週40時間勤務であり、その半分の勤務時間の方が対象になります。
- 月額賃金が88,000円以上
諸手当を含めた所定内賃金での見込み年収が106万円以上の場合、月々の賃金が8万8,000円以上になる方が対象になります。 - 1年以上の勤務の見込みがある(契約更新有りの場合も含む)
無期限契約または1年以上の雇用契約を結んでいる方が対象になります。
- 勤務先(雇用元)の保険加入者が501名以上いる
※派遣の場合は、派遣会社側の人数 - 学生ではない
重要です。106万円の壁が影響するのはパートや派遣で働く主婦の方たちです。
この5 つの条件を満たしている場合に、106万円の壁を超えた場合には、自分の勤務先での社会保険加入の義務が発生し、旦那の社会保険の扶養から外れることになります。逆に言うと、この5つの条件を満たしていなければ、106万円の壁を意識せずに働いても大丈夫です。
収入が106万円を越えるとどうなるのか
社会保険に加入すると、健康保険料と厚生年金料を支払う必要があります。合わせて社会保険料と呼びます。
給与や賞与から社会保険料が天引きされます。106万円を少しだけ超えてしまった場合に負担する社会保険料は、1万円前後になり、106万円をぎりぎり超えなかった人よりも手取りが減るので損します。
手取りはどうなるのか?
106万円の壁を超え、自分で社会保険に入ることになった場合の手取り額はどのくらい変わるのでしょうか?
月給8万円 | 月給8.9万円 | |
年収 | 96万円 | 106万8000円 |
健康保険料 | 0円 | 8811円 |
厚生年金料 | 0円 | 8144円 |
雇用保険料 | 240円 | 267円 |
税金合計 | 240円 | 1万7222円 |
手取り/月 | 7万9760円 | 7万1779円 (-7082円) |
手取り/年 | 95万7120円 | 86万1342円 (-9万5788円) |
※健康保険料9.9%(全国健康保険協会東京都の料率)、厚生年金9.15%、雇用保険0.3%として計算。
地域や世帯所得によって健康保険料は変わってくるので、あくまで参考程度にしてください。上の表から分かることは、106万円を少しだけ超えてしまった場合に負担する社会保険料は、1万円を超え、106万円をぎりぎり超えなかった人よりも手取りが10万円近く減るのでかなり損することになります。
月給8万円 | 月給10万円 | 月給12万円 | |
年収 | 96万円 | 120万円 | 144万円 |
健康保険料 | 0円 | 9900円 | 1万1880円 |
厚生年金料 | 0円 | 9150円 | 1万980円 |
雇用保険料 | 240円 | 300円 | 360円 |
税金合計 | 240円 | 1万9350円 | 2万3220円 |
手取り/月 | 7万9760円 | 8万650円 (+890円) | 9万6780円 (+1万7020円) |
手取り/年 | 95万7120円 | 96万7800円 (+1万680円) | 116万1360円 (+20万4240円) |
年収106万円を大きく超えた場合にはプラスになります。しかし、月給8万円と月給10万円を稼ぐ人では月給10万円の人の方が手取りは多いものの、働いた時間などを考慮すると割に合わない気もしますね。106万円の壁を越える際は、106万円を大きく越える場合に限定した方損せずに済みそうです。
106万円の壁を越えるメリット
106万円の壁を越えると「旦那の扶養を外れて社会保険料を支払わなければならない」といったデメリットを思い浮かべる方も多いかと思いますが、メリットも実はあります。
- 自分で社会保険に加入することで以前よりも保障が充実する
社会保険料を払わなければいけませんが、その分、公的医療保険からの給付が充実します。
例えば、怪我や病気で休業する場合や出産前後で休暇する場合、月給の3分の1くらいのお金が給付される傷病手当金や出産手当金が支給対象になります。これらの手当金は、休業による収入減少の影響を抑えることができます。保険料負担は確かに大きいですが、公的医療保険が充実するので、旦那に相談しましょう。 - 将来年金が増える
自分で厚生年金保険に加入するため、将来受け取る年金額が増加します。
夫の扶養に入っていたら、厚生年金保険の被保険者にはなれないので、将来受け取る年金額は、全国民共通の基礎年金である国民年金から支給される老齢基礎年金しかもらえません。しかし、106万円の壁を超えて自分で厚生年金保険に加入すると、払った保険料に見合った老齢厚生年金も受給できるようになります。
このように106万万円の壁を越えることによってメリットもあるので、超えそうな場合は旦那と相談してから決めると良いでしょう。
130万円の壁との違い
社会保険関連で106万円の壁と同様に話題に上がるのが、「130万円の壁」です。どう違うのか解説します。
先ほど説明した106万円の壁に当てはまる条件の全てに当てはまると、主婦の社会保険加入の義務が発生して旦那の扶養から外れることになります。しかし、1つでも当てはまらなければ106万円の壁を超えても社会保険加入の義務は発生しません。
違い
106万円の壁は条件に当てはまらなければ適用されませんが、130万円の壁は無条件で旦那の社会保険の扶養から外れます。扶養から外れたら、自分で勤務先の社会保険に加入することが義務づけられます。
例えば、パート主婦の年収が140万円で、従業員数500名以下の企業で勤務している場合、106万円の壁の条件である501名以上の従業員がいる企業という条件に当てはまらないため、106万円の壁で扶養を外れ、自分で勤務先の社会保険に加入する必要はありません。しかし、130万円の壁には、条件がないので130万円を超えているだけで、扶養から外れてしまいます。
何にせよ、まずは旦那に相談してみるのが得策です。