目次
年末調整の基本
そもそも年末調整とは
年末調整とは
会社では社員に給料や賞与を支払う際、源泉徴収として所得税を計算して天引きしています。そして12月になると、1年間の給与総額をもとに本来徴収するべき所得税額を再計算します。その際、各社員の事情に応じた控除も行ってくれ所得税の過不足額を調整できます。これを「年末調整」と言います。
年末調整の結果、一般的に会社から支給される12月の給料で、払いすぎた所得税があれば返ってきたり、足りない所得税があれば12月の給料から引かれます。
年末調整の対象となる人は下記の通りです。
- 年収2000万円以下の会社員
- 1月1日から12月31日まで1年間を通じて勤務している人
- 中途入社で12月31日まで勤務している人
※年末在籍のアルバイト、パート、派遣社員も対象となる - 死亡や事故で退職した人
年末調整で節税するために収入、所得、課税所得について知ろう
節税を最大限にするためには、収入、所得、課税所得について理解する必要があります。
給与所得控除
控除(こうじょ)とは、ある金額から一定の額を引くことを意味しています。
給与所得控除額の速算表
給与収入金額 | 控除額 |
162万5000円以下 | 65万円 |
162万5000円超180万円以下 | 収入金額×40% |
180万円超360万円以下 | 収入金額×30%+18万円 |
360万円超660万円以下 | 収入金額×30%+18万円 |
660万円超1000万円以下 | 収入金額×30%+18万円 |
1000万円超 | 220万円(上限) |
※同一年分の給与所得の源泉徴収票が2枚以上ある場合は、それらの支払い金額の合計金額を上記の表に適用。
意味
会社員の場合、上の表で求めた金額を差し引くことができます。個人事業主の場合、実際に使った交通費など必要経費の合計金額を差し引くことができます。所得
意味
1年間の収入から上で説明した給与所得控除を差し引いたものが所得になります。副業利益や宝くじなど会社以外にも所得を得てるなら、合計して計算しましょう。所得控除
意味
ある要件にあてはまる場合、所得の合計金額から一定の金額を所得控除として差し引くことができる制度です。例えば配偶者控除、扶養控除、医療費控除、社会保険料控除などがある。会社員や個人事業主は所得控除で大幅に節税をすることができます。所得控除の種類
- 基礎控除
すべての課税者について、一律に適用される38万円の控除 - 雑損控除
災害や盗難などに遭った際、その損害額に適用される控除 - 医療費控除
一部の入院治療代、介護費用などに適用される控除 - 社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・地震保険料控除
負担している保険料に適用される控除 - 寄附金控除
災害の義援金など、寄附をした金額に適用される控除 - 障害者控除
納税者自身や扶養親族に障害者がいる場合に適用される控除 - 寡婦(夫)控除
配偶者と離婚・死別して、扶養すべき子供などがいる場合に適用される控除 - 勤労学生控除
給与を得て働いている学生・生徒で、所得が一定水準以下の場合に適用される控除 - 扶養控除
養うべき家族などがいる場合に適用される控除 - 配偶者控除・配偶者特別控除
一定水準以下の収入の配偶者がいる場合に適用される控除
課税所得
意味
一年間の収入ー給与所得控除ー所得控除で求めることができます。所得税は課税所得に対してかかります。ですので、節税はいかに控除して課税所得を減らせるかにかかっています。
所得控除によりいくら控除できるのか
所得控除がいくら控除できるのか下記表にまとめました。
控除名 | 控除額 | 説明 |
---|---|---|
基礎控除 | 38万円 | すべての課税者について、一律に適用される38万円の控除 |
配偶者控除 | 38万円 | 年収103万円以下の配偶者がいると受けられる控除 |
配偶者特別控除 | 38万円まで | 年収103万円~141万円の配偶者がいると受けられる控除 |
扶養控除(一般) | 38万円 | 16歳以上の子供がいると受けられる控除 |
扶養控除(特定) | 63万円 | 年収103万円以下の19歳~22歳の子供がいると受けられる控除 |
寡婦控除 | 27万円〜 | 夫と死別または離婚した妻のためにある控除 |
寡夫控除 | 27万円 | 妻と死別または離婚し子供がいて、所得500万円以下の夫が受けられる控除 |
社会保険料控除 | 支払額全額 | 年金・健康保険・雇用保険を納めた分の控除 |
一般生命保険料控除 | 4万円まで | 民間の生命保険の支払いがあると受けられる控除 |
介護医療保険料控除 | 4万円まで | 介護医療保険の支払いがあると受けられる控除 |
個人年金保険料控除 | 4万円まで | 個人年金保険の支払いがあると受けられる控除 |
地震保険料控除 | 5万円まで | 地震保険の支払いがあると受けられる控除 |
医療費控除 | 支払額から10万円引く | 年間の医療費の10万円または所得金額の5%を超えた分の控除 |
小規模企業共済等掛金控除 | 掛金の全額 | 個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者が受けられる控除 |
雑損控除 | 5万円〜 | 災害や盗難などに遭った際、その損害額に適用される控除 |
会社員の方は、所得控除をきちんと年末調整で申告することで課税所得を減らすことができます。課税所得を減らすことが1番の節税です。
年末調整でどのくらい節税できたのか計算してみよう
先ほど、会社員の方は、所得控除をきちんと年末調整で申告することで課税所得を減らすことができると解説しました。
では課税所得からどのように所得税額を求めるのでしょうか?それが分かれば節税効果が分かると思います。
結論から言うと
所得税は、課税所得×税率で所得税額が算出できます所得税は累進課税制度により税率を決めている
累進課税制度とは
課税所得が多くなるにつれ税率が高くなっていく仕組み所得税の速算表
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超330万円以下 | 10% | 9万7500円 |
330万円超695万円以下 | 20% | 42万7500円 |
695万円超900万円以下 | 23% | 63万6000円 |
900万円超え1800万円以下 | 33% | 153万6000円 |
1800万円超4000万円以下 | 40% | 279万6000円 |
4000万円超 | 45% | 479万6000円 |
例えば、課税所得が195万円以下の場合、税率は5%ですが、900万円超では税率33%になります。
計算方法
課税所得額×税率-控除額=所得税額
税率と控除額は上記の速算表より、求めることができます。
例えば、課税所得が500万円の人は、上記の速算表に当てはめると、
500万円×0.2-42万7500円=57万2500円
簡単に求めることができます。500万円×0.2-42万7500円=57万2500円
他にも、課税所得が500万円の人は、195万円以下までの部分は5%、195万円超330万円以下までの部分は10%、330万円超500万円までの部分は20%で計算することで、所得税額を求めることができます。
195万円×0.05+135万円(195万円超330万円以下までの部分)×0.1+170万円(330万円超500万円)×0.2=9万7500円+13万5000円34万円=57万2500円
このように節税効果を簡単に求めることができます。